医師は確保できるのか
河合病院事業管理者は「新病院が建設されれば医師離れを防ぐことができ、更に不足している医師を確保できる」と話します。
では、全国の医師数の状況はどうでしょうか。
以前、厚生労働省は医師数の状況について「医師不足はなく、偏在しているだけである」との見解を表明していましたが、最近は 「医師の偏在および絶対数の不足」と修正し、2008年に桝添厚生大臣が「安心と希望の医療確保ビジョン」 を打ち出し医師数の増加の流れをつくりました。
それでは現在どの程度医師が不足しているのでしょうか?
厚生労働省の調査によると、医師数自体は増加傾向にあります。2006年の医療施設に従事する医師数は10年前と比べると14.4% 増加しています。
しかし全国で医師は29万人(2005年厚労省調査)いますが、この数字は医療免許所有者であり、実施に医療に従事しているものは、 21万人程度と言われています。この人数のOECD諸国での順位は70位前後になります。
医師数は増加していますが、絶対数が不足しているのが実態です。
厚生労働省による平成22年6月に行われた 「病院等による必要医師数実態調査の概要」によると全国の病院および分娩取り扱い診療所8698箇所の回答は、
現医師数167063人
必要医師数191096人
つまり24033人が不足しているという結果が出ています。
それでは山口県の場合はどうでしょうか。
現医師数2132人
必要医師数2699人
県下の病院においては567人の不足となっています。
絶対数が不足している上に、病院存続のためにどこの病院も医師の確保に躍起になっています。 それに拍車をかけていると考えられているのが、新臨床研修制度です。
よく、医師の研修制度が変わったから医師が集まらなくなったと聞きますが、どういう事でしょうか。
地域の病院などは、医者を確保するときには医局(ここでは山大です)の人事、 つまり医局から派遣されてくる医師を中心に構成されていました。
しかし2004年に「新臨床研修制度」がスタートし、大学病院など特定の病院でしか研修が受けられなかったのが、 一般の病院でも研修可能となり新人医師は、自由に病院を選べることになり、給料が安く下働きの多い大学病院での研修より待遇の良く、 設備もそろって様々な症例を見ることができる病院へ研修に行くことになりました。
そうなると大学病院は人員不足に陥り、 人員を確保し高度医療を維持するために地域の病院に送り込んでいた医師を呼び戻さざるを得なくなります。
この結果、地域の病院から医師が大学病院に呼び戻され、深刻な医師不足となっていきます。
しかし、違う側面からこの新制度を見てみると、医局に縛られていた医師の人事からある程度解放されることにより地域の病院はある意味、 医局に気を遣うことなく自由に採用活動を行う大義名分ができ新人医師に対して積極的な対応が可能となります。
これが今の医師不足の大きな流れですが、病院を建て替えることイコール医師を確保できることとはなりません。
河合病院管理者は本会議で医師確保は可能だと言及しましたが、 どのようにして現実のものにするのかが具体的に示されなければ議会のコンセンサスは得にくいのではないでしょうか。
現在25位です。