自治基本条例その3~最高規範性とまちづくり~
「 この条例は、市政運営の最高規範であり、他の条例又は規則の制定又は改廃に当たっては、 この条例の趣旨を最大限尊重しなければならない。」
特別委員会で審査中の自治基本条例第4条です。
この条文の解説として「本条例が、市政を運営していく上での最高規範になることを位置づけ、本市の他の条例、 規則等の制定又は改廃に当たっては、この条例の趣旨を最大限尊重しなければならないことを定めるものです。法形式としては、 自治基本条例も他の条例と同じ条例であり、その効力に関して優位の関係に立つものではありません。この条例でいう最高規範性とは、 このような法形式上の優劣関係として規定しているものではなく、理念的に他の条例を規律する上位規範として位置づけるものです。」 とあります。
最大限尊重などと解釈の隙をうかがわせるものですが、尊重とは法的には「特段の合理的な理由のない限り従う義務がある」 (最高裁判決昭和50年5月29日)ということです。
ということは、その効力に関して他の条例に対して優位に立つものになってしまいます。
しかし条例には優劣関係はなく、いくら「他の条例又は規則の制定又は改廃に当たっては、 この条例の趣旨を最大限尊重しなければならない」と明記しても「最高規範性」は生じることはなく、無意味な文言となるものです。
結果として、この条文や解説文は意味不明なものになってしまい、何回読んでも理解ができないのです。
おそらくこの条文により導きたいことは、 条例に最高規範性を持たせることによって市民に対して最高規範意識の醸成を図りたいのでしょう。 (もしかしたら最高規範意識の強制かもしれません。)
市民に対して最高規範意識の醸成を図るために、最高規範性のある条例を制定をしようとするならばその目的 (作成者が考える理想の市民自治)を達成できる日は間違いなく来ませんし、 まちづくりの主体である市民の最高規範意識の醸成もないまま条例を最高規範と謳うことはもってのほかです。
この条例により理想の市民自治を実現したいのなら、市民に対して制定前に最高規範意識の醸成を図ることをしなければならないはずです。
何故ならば、この条例そのものが市民が直接市政に参画、またまちづくりに参加する事を謳った条例であり、 市民の責務などが含まれている精神条例だからです。
市民を軽視することなく直接的なコンセンサスをとることが必要不可欠なものと考えるのが自然です。
また市民は議会や市長に対して選挙を通して「信託契約」を結んでいますが、最高規範条例(市の憲法) の制定権までも信託をしているものではないと解されています。
といことは、理想の市民自治実現のために最高規範性をどうしても謳いたいのなら住民投票しかないでしょう。 もちろん制定をした他市ではそんなことは行っていません。 制定過程のプロセスを問題視しながらも議会が議決をして制定をしているのが現状です。
しかし本当にこの条例で理想の市民自治を実現できるのでしょうか。
先日の議員意見交換会で「地域のイベントなどで市の職員の姿をあまり見ない。市の職員は率先してお手伝いなどをすべきだろう」
また市民からも「限られた人間しか地域活動をしていない。俺たちはこんなに一生懸命やっているのに何故だ」などの意見を聴きます。
それらの声を反映してか条文には「市民の責務」や「職員の責務」があります。
条例を制定すれば解決できるのでしょうか。
できません。
多くの市民が市民のレベルでまちづくりに関心を持ち参加や参画する社会は、すばらしい理想的な社会かもしれません。
しかしその理想的な社会の実現のために条例を制定しても更なるジレンマに陥ることになるはずです。
重要なことは、条例で意識の上での強制力を持たせるのではなくて市民ひとりひとりが自主的に参加、 参画したくなるような環境を作っていくことだと思います。
自主性こそがまちづくりにおいての基本姿勢です。
市民憲章にもあるように「自ら考え、汗を流す」ことが大事なことではないでしょうか。
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